聴神経腫瘍は、耳の奥から脳へ向かう神経にできる良性腫瘍です。医学的には、前庭神経に発生することが多いため、前庭神経鞘腫とも呼ばれます。小さく、症状が安定している場合には、MRIで経過を観察することがあります。腫瘍が増大している、聴力が低下している、顔面神経への影響が心配される場合には、定位放射線治療や手術を検討します。顔面神経は、聴神経(前庭蝸牛神経)のすぐそばを走っています。聴神経腫瘍の手術では、腫瘍を摘出しながら顔面神経機能を守ることが最も重要な課題のひとつです。松島医師は、外科解剖の知識と術中神経モニタリングを活用し、腫瘍の大きさ、内耳道への進展、顔面神経の走行を踏まえた上で、顔面神経機能と腫瘍制御の両立を目指します。聴神経腫瘍以外にも、三叉神経、頸静脈孔神経(舌咽・迷走・副神経)、顔面神経、眼窩内の神経に発生する神経鞘腫を扱います。
このページで分かること
- 聴神経腫瘍に対する経過観察・定位放射線治療・手術の選び方
- 顔面神経機能と腫瘍制御の両立を目指した手術の考え方
- 内耳道内の腫瘍、血流が豊富な腫瘍、放射線後再増大に対する対応
- 三叉神経鞘腫・頸静脈孔神経鞘腫・顔面神経鞘腫・眼窩内神経鞘腫の治療
- 術後の顔面神経機能と長期的な経過について
聴神経腫瘍と神経鞘腫について
聴神経腫瘍は、内耳道から脳幹に向かって広がる良性腫瘍です。医学的には、聴覚を伝える蝸牛神経ではなく、平衡感覚を担う前庭神経に発生することが多いため、前庭神経鞘腫とも呼ばれます。
聴神経腫瘍は良性腫瘍であり、一度の手術や放射線治療でコントロールできることが多い一方で、顔面神経・聴神経という機能的に重要な神経のそばにある腫瘍であるため、治療の目的は「腫瘍を根絶する」だけでなく、「顔面神経機能を守りながら、長期にわたって腫瘍をコントロールする」ことにあります。そのため、経過観察、定位放射線治療、手術のどれを選ぶか、またその時期をいつにするかは、患者様の状態や希望を踏まえた上で慎重に決める必要があります。
神経鞘腫は、神経の外側を包むシュワン細胞から発生する腫瘍です。聴神経(前庭蝸牛神経)以外にも、三叉神経、頸静脈孔を通る神経(舌咽神経・迷走神経・副神経)、顔面神経、眼窩内の神経などに発生することがあります。
経過観察・放射線治療・手術を長期的な視点から選ぶ
腫瘍の大きさ、増大速度、聴力、顔面神経機能、年齢、患者様の希望を踏まえ、最適な治療時期と方法を一緒に考えます。
顔面神経機能と腫瘍制御の両立を目指す
術中リアルタイム顔面神経モニタリングと外科解剖の知識を組み合わせ、機能を守りながら腫瘍をコントロールします。
難しい腫瘍にも術前評価を重ねて対応する
血流が豊富な腫瘍、内耳道深部まで進展した腫瘍、放射線治療後に再増大した腫瘍にも対応します。
腫瘍の種類と症状
聴神経腫瘍では、難聴、耳鳴り、めまいがよく見られます。腫瘍が大きくなると、顔面のしびれ(三叉神経への影響)、顔面神経麻痺、ふらつき、飲み込みの違和感などが出ることがあります。症状がほとんどなく、健診や別の病気の検査で偶然見つかることも少なくありません。
| 腫瘍の種類 | 症状・特徴 |
|---|---|
| 聴神経腫瘍(前庭神経鞘腫) | 難聴、耳鳴り、めまいで発症することが多い。腫瘍が大きくなると顔面のしびれ、顔面神経麻痺、ふらつき、飲み込みの違和感が出ることがあります。 |
| 三叉神経鞘腫 | 顔のしびれや痛み(三叉神経痛様症状)を起こすことがあります。頭蓋内から眼窩内まで連続することがあります。 |
| 顔面神経鞘腫 | 耳の奥から頭蓋底にかけて発生し、顔面神経麻痺が主な症状です。聴神経腫瘍との鑑別が必要なことがあります。 |
| 頸静脈孔神経鞘腫 | 舌咽神経、迷走神経、副神経などが通る頸静脈孔に発生します。嚥下障害、声がれ、肩の動きの低下などが問題になります。 |
| 眼窩内神経鞘腫 | 目の奥の眼窩にできる神経鞘腫です。視力低下や眼球の突出などで気づかれることがあります。 |
診断と治療前の評価
聴神経腫瘍の診断には造影MRIが中心になります。腫瘍の大きさ、内耳道への進展の程度、小脳や脳幹への圧迫の有無を確認します。また、聴力検査(純音聴力検査、語音聴力検査)、平衡機能検査なども行います。
手術を検討する場合には、腫瘍と顔面神経・聴神経の位置関係を詳しく確認するため、内耳道や頭蓋底の骨の状態をCTで確認し、MRI画像を用いた術前シミュレーションを行います。顔面神経の走行は腫瘍の形状によって変化していることがあるため、術前に解剖学的なシミュレーションを行い、手術計画に反映させます。
どの治療を選ぶかを決めるには、腫瘍の大きさ・増大速度・内耳道への進展の程度、聴力の状態、顔面神経機能、年齢、全身状態、患者様の希望と生活への影響を総合的に考えます。
治療の選択肢
| 治療 | 特徴 |
|---|---|
| 経過観察 | 小さく、症状が安定している場合は定期的なMRIで経過をみます。増大していれば治療を検討します。 |
| 定位放射線治療 | 腫瘍の増大を抑えることを目的とした治療で、手術に比べて侵襲が少ない反面、腫瘍は残ります。 |
| 手術 | 腫瘍を摘出し、脳や神経への圧迫を解除します。顔面神経機能と腫瘍制御の両立を目指します。 |
経過観察・定位放射線治療・手術のそれぞれに利点と限界があります。「経過観察」は侵襲なく様子をみられますが、増大を見逃さないための定期的なMRIが必要です。「定位放射線治療」は手術に比べ侵襲が少なく外来で行えますが、腫瘍は残ります。「手術」は腫瘍を摘出できますが、顔面神経機能への影響があります。どれを選ぶかは腫瘍の状態、聴力、顔面神経機能、患者様の年齢・希望を踏まえて一緒に考えます。
聴神経腫瘍の手術とは
聴神経腫瘍の手術では、腫瘍を摘出しながら顔面神経機能を守ることが最も重要な課題です。顔面神経は腫瘍に押しのけられ、引き伸ばされ、強く癒着していることがあります。術中リアルタイム顔面神経モニタリングを用いて、神経への刺激を確認しながら腫瘍を摘出します。
術中リアルタイム顔面神経モニタリングは、手術中に顔面神経へ電気刺激を与え、顔の筋肉の反応(筋電図)を継続的に記録する方法です。このモニタリングにより、顔面神経の位置を確認したり、神経への負担を検知したりすることができます。ただし、モニタリングは神経機能の変化を「感知する」ための手段であり、術後の顔面神経機能を完全に保証するものではありません。
内耳道の深部まで腫瘍が進展している場合、または内耳道内の小さな腫瘍では、内耳道の壁を削開して確認する必要があります。
血流が豊富な聴神経腫瘍は、手術中の出血が多くなりやすく、腫瘍と顔面神経・脳との境界が確認しにくくなることがあります。術前MRIでの評価と術前シミュレーションにより、こうした特徴を把握した上で手術に臨みます。
定位放射線治療後に再増大した聴神経腫瘍では、腫瘍と周囲組織の癒着が強くなっていることがあります。初回手術と比較して、顔面神経の確認や操作が難しくなる場合があります。
その他の頭蓋内・頭蓋底神経鞘腫
神経鞘腫は、聴神経(前庭蝸牛神経)以外の脳神経にも発生することがあります。
三叉神経鞘腫
三叉神経鞘腫は、顔の感覚を担う三叉神経に発生する神経鞘腫です。顔のしびれ、痛み、咀嚼筋の萎縮などが問題になります。頭蓋内(中頭蓋窩・後頭蓋窩)から頭蓋底(卵円孔周囲)、さらに眼窩内まで連続して広がることがあり、腫瘍の発生部位と広がりによってアプローチが異なります。三叉神経鞘腫には外科解剖の知識をもとに頭蓋底外科的アプローチを用いることで、腫瘍の全体像を把握して操作します。
頸静脈孔神経鞘腫
頸静脈孔神経鞘腫は、頸静脈孔を通る舌咽神経・迷走神経・副神経などに発生する神経鞘腫です。嚥下障害、声がれ、肩の動きへの影響が問題になることがあります。頸静脈孔は頭蓋底の深い場所にあり、手術では内頸静脈・内頸動脈との関係、頸静脈球の処理が問題になります。術前画像評価、術中神経モニタリング、頭蓋底外科的アプローチを組み合わせて治療方針を検討します。
顔面神経鞘腫
顔面神経鞘腫は、顔面神経に沿って発生する神経鞘腫です。顔面神経は内耳道・膝神経節・乳突部を通り耳の後ろから顔に出てきます。顔面神経鞘腫では、顔面神経麻痺が主な症状ですが、聴力低下が先に出ることもあります。聴神経腫瘍との鑑別が必要になることがあり、術前MRIで顔面神経の走行を詳しく確認します。治療では、顔面神経機能の現在の状態と、手術することによる顔面神経への影響を踏まえ、経過観察・放射線治療・手術を検討します。
眼窩内神経鞘腫
眼窩内神経鞘腫は、目の奥の眼窩内にある神経に沿って発生する神経鞘腫です。視力低下、眼球の突出、複視などで気づかれることがあります。眼窩は狭い空間であり、視神経への影響を最小限にしながら腫瘍を摘出するために、病変の位置と広がりに応じたアプローチが重要です。眼科との連携のもとで治療方針を検討します。
治療で大切にしていること
経過観察・定位放射線治療・手術を適切に選ぶ
聴神経腫瘍は良性腫瘍であり、「腫瘍を取ること」だけが治療の目的ではありません。腫瘍の大きさ、増大速度、聴力、顔面神経機能、年齢、患者様の生活・希望を踏まえ、経過観察・定位放射線治療・手術のうちどれを選ぶか、またその時期をいつにするかを一緒に考えます。特に経過観察から手術へ移行するタイミングは、腫瘍の増大速度と、腫瘍が大きくなることで手術時の顔面神経リスクがどう変わるかを踏まえて慎重に判断します。
顔面神経機能と聴力を守ることを重視する
聴神経腫瘍の手術で最も重要な課題のひとつは、顔面神経機能を守ることです。術中リアルタイム顔面神経モニタリングを用いながら、腫瘍との癒着部分の処理や顔面神経の確認を丁寧に行います。聴力についても、残存する聴力と腫瘍摘出のバランスを踏まえて方針を考えます。
外科解剖をもとに、変形した神経と血管の位置関係を考える
聴神経腫瘍は良性腫瘍であっても、腫瘍が大きくなると顔面神経・蝸牛神経・三叉神経・外転神経、椎骨動脈系の血管、脳幹が変形・移動していることがあります。術前MRIで3Dシミュレーションを行い、変形した解剖を正確に把握した上で手術計画を立てます。
長期的な経過と生活まで見据える
術後の顔面神経機能は、腫瘍の大きさ、手術時の癒着の程度、術中モニタリングの結果によって変わります。術後の顔面神経機能と長期的な腫瘍制御のバランスを踏まえ、必要に応じて追加治療(放射線治療など)を検討することがあります。
よくある質問
Q. 聴神経腫瘍は良性ですか?
多くは良性腫瘍です。聴神経腫瘍は、医学的には前庭神経鞘腫と呼ばれ、ゆっくり大きくなることが多い腫瘍です。ただし、良性であっても、聴神経、顔面神経、三叉神経、脳幹、小脳の近くにできるため、腫瘍の大きさや場所によっては症状や治療の難しさが問題になります。
Q. 聴神経腫瘍は必ず手術が必要ですか?
必ず手術が必要なわけではありません。小さく、症状が軽く、増大が乏しい腫瘍では、定期的なMRIで経過をみることがあります。一方で、腫瘍が大きくなっている、脳幹を圧迫している、水頭症がある、症状が強い、若年で長期的な腫瘍制御が必要と考えられる場合には、定位放射線治療や手術を含めて治療方針を検討します。
Q. 経過観察でよいか、治療を考えるべきかはどう判断しますか?
腫瘍の大きさ、増大速度、聴力、耳鳴りやふらつきの程度、顔面のしびれ、脳幹圧迫、水頭症の有無、年齢や全身状態を確認して判断します。小さな腫瘍でも増大傾向がある場合や、症状が生活に影響している場合には、治療を検討することがあります。反対に、ある程度の大きさがあっても、症状や増大傾向によっては慎重に経過をみることがあります。
Q. 定位放射線治療と手術はどう違いますか?
定位放射線治療は、腫瘍の増大を抑えることを目的に行われます。中小型腫瘍や、手術の負担を避けたい場合に検討される有効な治療です。手術は、腫瘍を摘出し、脳幹や神経への圧迫を解除する治療です。どちらがよいかは、腫瘍の大きさ、年齢、聴力、症状、患者様の生活によって異なります。放射線治療と手術は対立する治療ではなく、それぞれの利点と限界を踏まえて方針を考えることが大切です。特に聴神経腫瘍は長く経過をみる病気であり、同じ部位への放射線治療を繰り返す場合には、線量や周囲組織への影響による制限があります。そのため、将来の治療選択肢を残す意味でも、放射線治療を行うタイミングは慎重に考えます。
Q. 手術を受けると顔面神経麻痺は起こりますか?
顔面神経麻痺が起こる可能性はあります。聴神経腫瘍の手術では、腫瘍に引き伸ばされた顔面神経が腫瘍表面を走っているため、腫瘍の大きさや癒着の程度によっては、一時的または永続的な顔面神経麻痺が起こることがあります。そのため、手術では顔面神経モニタリングを用い、神経の走行と反応を確認しながら操作します。腫瘍をすべて取ることだけでなく、顔面神経機能を守ることを重視して摘出範囲を判断します。一時的な顔面神経麻痺が起きた場合でも、数週間から数か月、場合によっては1年程度の経過で改善がみられることがあります。もし顔面神経麻痺が起きた場合には、目を守るための点眼・眼軟膏や、状態に応じて専門的な指導のもとで表情筋のマッサージやケアを行います。
Q. リアルタイム顔面神経モニタリングとは何ですか?
従来の顔面神経モニタリングでは、手術中に電気刺激を行い、顔面神経の位置を確認するマッピングが中心でした。リアルタイム顔面神経モニタリングでは、顔面神経を反復刺激する位置に電極を置き、神経の反応を確認しながら腫瘍摘出を進めます。これにより、顔面神経に負担がかかり始めた変化を操作中に確認し、摘出操作の強さや方向を調整します。腫瘍を十分に摘出することと、顔面神経機能を守ることのバランスを取るための工夫です。
Q. 手術で聴力は残せますか?
腫瘍の大きさ、手術前の聴力、内耳道での腫瘍の広がり、聴神経との関係によって異なります。小型から中型の腫瘍で、術前聴力が保たれている場合には、聴力温存を目指せることがあります。一方で、大型腫瘍、術前から聴力が大きく低下している場合、腫瘍と聴神経の癒着が強い場合には、聴力温存が難しいことが多いです。手術ではABRなどの術中モニタリングを用いて、聴神経や内耳への負担を確認しながら操作します。聴力温存を目指すかどうかは、腫瘍の状態だけでなく、顔面神経機能や長期的な腫瘍制御とのバランスを踏まえて判断します。
Q. 腫瘍は全部取ったほうがよいのですか?
腫瘍を十分に摘出できれば、長期的な腫瘍制御を期待しやすくなります。一方で、顔面神経や聴神経、脳幹に強く癒着した部分まで無理に摘出すると、顔面神経麻痺や聴力障害などのリスクが高くなることがあります。そのため、特に大型腫瘍や放射線治療後の腫瘍では、神経機能を守るために一部を残す判断をすることがあります。「残す」ことは手術が不十分という意味ではなく、長期的な腫瘍制御と神経機能温存のバランスを考えた判断である場合があります。
Q. 水頭症がある場合、シャント手術も必要ですか?
聴神経腫瘍は、水頭症を起こすことがあります。水頭症には、腫瘍による圧迫だけでなく、髄液の循環や吸収の変化が関係するものもあります。聴神経腫瘍に伴う水頭症では、腫瘍を十分に摘出することで水頭症が改善し、シャント手術を行わずに経過をみられる場合が多くあります。ただし、症状や術後経過によっては追加治療が必要になる場合もあるため、MRI所見と症状をみながら判断します。
Q. 放射線治療後に腫瘍が大きくなっても手術できますか?
相談は可能です。ただし、放射線治療後に再増大した腫瘍では、神経や脳幹との癒着が強くなっていることがあり、初回手術より慎重な判断が必要です。また、放射線治療後は一時的に腫瘍が膨らむことがあります。本当に再増大が続いているのか、一時的な増大なのかは、放射線治療を担当した医師の意見やMRIの経過も確認して判断します。このような場合には、神経機能を守ることを重視しながら、長期的な腫瘍制御とのバランスを考えて摘出範囲を慎重に判断します。腫瘍を無理に取り切ることだけを目標にせず、術後の顔面神経機能や生活への影響を含めて方針を考えます。過去の治療内容、放射線治療の時期、MRIの経過が分かると、方針を検討しやすくなります。
Q. 血流が多い聴神経腫瘍とは何ですか?
聴神経腫瘍の中には、血流が非常に豊富で手術中に出血しやすい腫瘍があります。若年者、大型腫瘍、充実性腫瘍などで問題になることがあります。血流が多い場合には、術前画像や血管評価をもとに、手術中の出血を減らす工夫を検討します。必要に応じて血管内治療専門医と相談し、術前塞栓術を検討することがあります。
Q. 三叉神経鞘腫や顔面神経鞘腫も相談できますか?
相談可能です。三叉神経鞘腫、顔面神経鞘腫、頸静脈孔神経鞘腫などは頻度の少ない腫瘍ですが、顔の感覚、顔面神経機能、聴力、嚥下や声などに関わるため、専門的な判断が必要です。腫瘍の場所、症状、MRI所見、年齢や全身状態を踏まえ、経過観察、定位放射線治療、手術を含めて治療方針を整理します。
Q. 手術のリスクにはどのようなものがありますか?
聴神経腫瘍・神経鞘腫の手術リスクは、腫瘍の大きさや場所によって異なります。一般的には、顔面神経麻痺、聴力低下、耳鳴り、めまい、ふらつき、顔のしびれ、髄液漏、感染、出血、脳神経症状の悪化などが起こる可能性があります。頸静脈孔神経鞘腫では、声のかすれ、飲み込みにくさ、肩の上がりにくさなどにも注意が必要です。手術前には、腫瘍を治療することで期待できる改善と、手術によるリスクを整理して判断します。手術では、術中神経モニタリングや血流評価などを必要に応じて組み合わせ、神経や血管への負担をできるだけ抑えるように計画します。
Q. 入院期間はどのくらいですか?
腫瘍の大きさや手術内容、術後経過によって異なりますが、予定手術では1週間前後で退院を検討することが多くあります。多くの予定手術では、術後はICUで1泊して状態を確認し、問題がなければ翌日から歩行を開始します。食事も翌日から再開することが多いですが、腫瘍の場所や術後の嚥下機能を確認して判断します。術後は、顔面神経機能、聴力、ふらつき、歩行、創部の状態などを確認し、退院後の生活を想定しながら退院時期を判断します。
Q. 高齢でも治療は受けられますか?
年齢だけで治療方針が決まるわけではありません。腫瘍の大きさ、増大速度、症状、聴力、全身状態、麻酔リスク、生活への影響を踏まえて判断します。高齢の方では、経過観察や定位放射線治療が適している場合もあります。一方で、脳幹圧迫や水頭症がある場合には、体への負担も考えながら手術を検討することがあります。

松島 健
Ken Matsushima, M.D., Ph.D.
東京医科大学病院 脳神経外科 講師
顔面けいれん・三叉神経痛に対する微小血管減圧術、髄膜腫・聴神経腫瘍・眼窩内腫瘍を含む頭蓋底腫瘍、脳動脈瘤・脳血行再建を含む脳血管障害を専門としています。